
失敗しない不動産業者の選び方
高額査定にだまされるな!
しかし、査定額はその金額で売れることを約束するものではありません。売主から媒介契約を得るために、相場より高い金額を提示する会社もあります。高い査定額で売り出したものの、問い合わせが少なく、何度も値下げを勧められて、結局は当初の想定より安く売却することになった――。そんな結果を避けるには、査定額の高さではなく、査定の根拠と販売活動の中身を確かめることが大切です。
では、どの会社の、どこを見ればよいのでしょうか。後悔のない不動産会社選びのために、確認したいポイントを順に紹介します。
査定額の「高さ」より、根拠を確かめる
査定を受けたら、金額だけでなく、どのような情報をもとに算出したのかを質問しましょう。確認したいのは、近隣の成約事例、現在売り出 し中の競合物件、駅やバス停からの距離、土地や建物の状態、築年数、間取り、日当たり、修繕履歴などです。
特に、成約事例と売り出し中の価格は区別してもらいましょう。現在広告に出ている価格は、売主の希望価格であり、その価格で成約したとは限りません。近隣の成約価格を示し、対象物件との違いも説明できる担当者なら、査定の考え方を検討しやすくなります。
査定額について意見を述べる際、不動産会社は根拠を示して説明するものとされています。査定書を受け取ったら、数字の裏付けがあるか、価格を上下させた要因が書かれているかを確認しましょう。
「なぜこの価格なのか」を質問する
- この査定額の根拠になった成約事例はどれですか。
- その事例と、私の家の違いは何ですか。
- この価格で売り出した場合、どのくらいの期間を想定していますか。
- 価格を下げる判断は、どのような状況になったときに行いますか。
- 近隣の競合物件と比べて、どこが強みで、どこが弱みですか。
答えが具体的で、こちらの質問に正面から答えてくれるかを見ます。「この地域なら絶対に売れます」「まずは高く出しておけば大丈夫です」といった説明だけで、データや販売計画が出てこない場合は慎重になりましょう。
高い査定額そのものが悪いわけではありません。周辺の成約事例や物件の特長を踏まえ、納得できる説明があれば、強気の価格から売り出す選択もできます。大切なのは、査定額と売り出し価格を混同せず、売却にかかる時間や値下げの可能性も含めて話し合うことです。
会社の知名度だけで決めない
大手だから安心、地元の会社だから詳しい――。どちらも一つの判断材料にはなりますが、それだけで決めるのは避けたいところです。大手でも担当者や店舗によって対応に差がありますし、地域に根ざした会社でも、担当者の経験や販売力はさまざまです。
まず、宅地建物取引業の免許がある会社かを確認しましょう。国土交通省の検索システムでは、宅地建物取引業者の情報を調べられます。国土交通省「宅地建物取引業者 検索」 免許の有無を確かめるのは基本ですが、免許があることだけで、販売力や対応の良さまで保証されるわけではありません。
そのうえで、売却する地域での取引実績や、担当者がどのように買主を探すのかを聞きます。「このあたりの物件を何件扱いましたか」「最近の成約例を教えてください」「購入希望者の情報はどのように集めますか」など、具体的に尋ねてみましょう。個人情報に配慮しながら、事例や活動内容を説明できるかが判断材料になります。
見るべきなのは、会社名より担当者の対応
専門用語を並べるのではなく、こちらが理解できる言葉で説明してくれるか。売主の希望を聞き、売却理由や希望時期を踏まえた提案をしてくれるか。不利な情報やリスクも隠さず伝えてくれるか。こうした姿勢を見てください。
また、担当者と連絡が取りやすいか、問い合わせへの返答が遅れたときに説明があるかも重要です。売却活動が始まれば、内覧の調整や購入申込みへの返答など、迅速な判断が必要になる場面があります。最初の相談時から連絡が滞りがちな場合は、売却中の対応についても確認しておきましょう。
販売活動の内容を契約前に聞く
「広告を出します」「広く宣伝します」という説明だけでは、具体的な活動が見えません。どの不動産ポータルサイトに掲載するのか、自社の顧客や購入希望者にどう紹介するのか、チラシや現地看板を使うのか、写真撮影や物件紹介文をどう工夫するのかを確認しましょう。
あわせて、売り出し後の報告頻度や内容も聞いてください。問い合わせ件数、内覧件数、購入希望者の反応、競合物件の変化など、何をどのくらいの頻度で報告するのかを事前に決めておくと、売却活動の状況が分かりやすくなります。
専任媒介契約では、業務の処理状況を2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上報告する義務があります。契約の種類によって、複数社への依頼や自分で見つけた買主との取引にも違いがあります。契約書を読まずに「お任せします」と進めず、自分の売却方針に合う契約形態を選びましょう。
レインズの登録と取引状況を確認する
専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶと、会社には物件をレインズに登録する義務があります。レインズは不動産会社同士が物件情報を共有する仕組みです。登録後は登録証明書を受け取り、記載された二次元コードなどから、売主自身で登録内容や取引状況を確認できるかを確かめましょう。
国土交通省は、2025年1月から、専任・専属専任媒介物件の取引状況をレインズに登録することを不動産会社に義務付けています。売主は専用画面で「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」といった状況を確認できます。国土交通省「レインズの機能強化について」
契約前に、「レインズへの登録はいつ行いますか」「登録証明書はいつ受け取れますか」「売主専用画面の確認方法を教えてもらえますか」と聞いてみてください。登録内容や販売状況を確認できる仕組みを、担当者がきちんと説明してくれるかどうかも、会社選びのポイントです。
媒介契約と仲介手数料を確認する
媒介契約は、不動産会社に売却活動を依頼するための契約です。一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があり、他社にも依頼できるか、自己発見取引ができるか、報告義務やレインズ登録義務があるかなどが異なります。契約期間や更新の方法、解約の条件、広告費などの負担についても、契約前に確認しておきましょう。
仲介手数料は、法律上の上限額が定められていますが、上限額がそのまま必ず請求されるという意味ではありません。金額や支払時期は媒介契約の前に確認し、書面に記載してもらいましょう。通常の仲介手数料とは別に、特別な広告費や追加サービスの費用がかかると言われた場合は、内容と金額、依頼するかどうかを一つずつ確認します。国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」
なお、800万円以下の宅地・建物については、2024年7月以降、一定の条件のもとで仲介手数料の特例があります。該当する物件では、通常の上限計算とは異なる場合があるため、特例の適用条件と報酬額を会社に確認してください。
物件の状態や不具合について、率直に話せるか
雨漏り、設備の故障、シロアリ被害、過去の修繕や近隣との問題など、気になることがあれば、査定の段階で担当者に伝えてください。売却に不利になる情報だからと隠すと、後になって買主とのトラブルにつながるおそれがあります。
担当者が「言わなくて大丈夫です」と簡単に片付けるのではなく、どの情報をどのように買主へ伝えるか、売買契約でどのように扱うかを確認しましょう。建物の状況調査や専門家への相談が必要かどうかも、状況に応じて話し合います。売却後の責任や契約条件は物件ごとに異なるため、重要な点は契約前に十分説明を受け、必要であれば弁護士や税理士などにも相談してください。
最後は「任せたいと思えるか」で決める
不動産会社を選ぶ際は、査定額、販売計画、担当者の対応、報告体制、契約内容を並べて比較しましょう。査定額が高い会社を候補から外す必要はありませんが、「その価格で売れる根拠」と「売れなかった場合の対応」を説明できるかを確かめてください。
判断に迷ったときは、次の点を見直します。
- 査定額の根拠が、具体的な成約事例や物件の条件に基づいているか。
- 売り出し価格や値下げの判断について、事前に相談できるか。
- 広告や購入希望者探しの方法が具体的か。
- 販売状況の報告内容や頻度を確認できるか。
- 媒介契約の種類、期間、解約条件、費用を理解できたか。
- 不利な情報や売却後のリスクも説明してくれるか。
- 質問に誠実に答え、連絡を取りやすい担当者か。
家の売却は、価格だけでなく、売却時期や引渡し条件、買い替えの予定なども関わる大きな取引です。複数社に査定を依頼したうえで、査定額の高さではなく説明の納得感と担当者への信頼を比べてください。契約を急がされても、その場で決めず、書類を持ち帰って確認してかまいません。
「高く売れると言った会社」ではなく、「価格の根拠を示し、売却活動を見える形で報告し、必要な判断を一緒に考えてくれる会社」。そうした相手を選ぶことが、売却後に「この会社に頼んで失敗した」と感じないための第一歩です。
